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友人と、何気なく顔を出した大学の就職説明会の場に彼はいた。

ちょっと目つきが悪くて、髪は硬めでツンツンしていて僕がなんだかウニみたいだというと あの人になんだそれはバカにすんなと怒られて。(とりあえずあまりよくないものだと認識したらしい) でも実は手触りがとってもよくて、一緒に昼寝をしたあとは、 まるで洗濯石鹸のCMの文句のようだけれど、本当におひさまの香りがした。

「日和出版の採用人事担当、蘇我です。本日は宜しくお願い致します」

―――入鹿さんだ。

僕は普段あまり表情が動かないと言われるけれど、このときばかりはとんだ間抜け面をしていたと思う。 あの人と最後に会ったのは、もう何年も何年も前で、でも忘れたことなんてなかった。 幾分、過去出会ったときよりも幼い面差しから、今は20代半ばくらいか。

「…で、数値を見ていただければ判る通り、弱小で知名度が低い割には健全な出版社です。 今回の採用では、…」

僕が彼を見間違えるわけなんてない。

「…いるか、さん?」


思わず落ちた呟きは、人ごみに流されて消えてしまった。













「どーした太一、口元抑えて。気分悪いのか?人に酔ったか?」
「鬼塚くん」
「ん?」
「生まれ変わりとかって、信じる?」
「――、全く同じひとってわけにはいかないだろうけど、魂は巡るかもしれないな」
「流石文学部哲学科」
「…たいち?」


悪戯につりあがる口角を隠すことが出来ない。









―――ああ、もう、離さない。絶対に。







 を さ が し て た




2010/02/13